在庫管理と保全のハザマに焦点を当てる
『在庫を減らせ』という経営層からの指示と、『部品がなきゃ直せない』という現場の悲鳴の間で板挟みになっていることはないでしょうか?
これまで在庫管理に関する技術コラムを掲載してきました。
在庫管理を行うことは最終的には設備の稼働とコスト関係に繋がります。
本技術コラムでは設備の稼働率と(在庫管理を含む)コストの関係について説明します。
本コラムが「勘と経験の保全」から、「技術に基づいた保全」の第一歩となれば幸いです。
設備の稼働率をあらわす量、固有アベイラビリティは以下のように定義されています。
MTBFは機器が壊れるまでの間隔を表現しています。そのため保全の視点からは機器が故障した後に対応する事後保全のみと関係しています。
MTTRは、担当者が純粋に工具を使い作業をする修理時間を表現しています。
そのため保全の視点からは修理部品を輸送するリードタイムなどは考慮されていません。
これらを踏まえると、固有アベイラビリティは「設計上の強さ・直りやすさ」を表現している量と言えます。
先ほどのモデルでは一日の需要が一定量μとなっていました。しかし実際には正確に一定であることは少なく、バラツキがあるケースがほとんどです。バラツキを考慮するため以下のようにモデル化します。
一日の需要が正規分布に従うと仮定します。そのときの平均需要をμ、分散をσ2とします。
リードタイム(発注してから倉庫に届くまでの時間)をL[日]とすると
σ2のバラツキがL[日]あるので、
そのため総標準偏差は √L σとなる。
これまでの計算で総標準偏差は√L σとなることが分かりました。これはリードタイム期間中の不確実性を蓄積したものです。
では√L σの在庫を持てば欠品を防ぐことができるのでしょうか?
実は√L σの在庫数では正規分布上では「84.1%でしか欠品を防げない」と言えます。
もし「95%」や「99%」といったより高い確率で絶対に欠品を防ぎたい場合、このリスクの基準値 √L σを「何倍に引き上げるか」という調整が必要になります。
その調整のための係数を安全係数と言います。
安全係数をkと置いたとき、
となります。
以下の表に例として安全係数と欠品を防ぐ確率の関係を示します。
まとめ
これまで安全在庫について述べてきましたが、運用面で大事な点をまとめてみました。
1. 予測の精度を上げる( σ の抑制)
需要のバラツキ(標準偏差σ )を小さくできれば、安全在庫はダイレクトに削減することができます。データ分析と情報共有の強化が、そのまま在庫圧縮に直結すると言えます。
2. リードタイムを縮める( √L の効果)
安全在庫はリードタイムの√Lに比例します。もし調達期間を4分の1に短縮できれば、備えるべき在庫リスクは「半分」にまで減少することができます。
3. 覚悟を決める( 安全係数k による経営判断)
基準値√Lσを何倍にするかを決める安全係数kは、「人間の意思決定」により導入されます。すべての在庫で完璧を目指すのではなく、重要度に応じて「守る確率」に傾斜をつけることが重要です。
弊社ではお客様のご状況に応じて、導入から運用まで幅広くご支援しております。ぜひお気軽にご相談ください。
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