昨今では、生活へ欠かせない高機能バッテリーが新規材料開発のホットスポットであり、
そしてこの分野の新規材料開発は、さらなる高機能、安定性、コンパクトさを必要としています。 その要望には、バッテリーはマクロなイオン拡散からミクロな電気的特性まで、幅広いスケールの調査と解析が必要です。
この特集では、Materials
Studioを研究に活用しているバッテリーをテーマにした論文の紹介や計算の再現をしております。
水と金属酸化物表面間における相互作用というファクターは科学において幅広い分野と関係しており、例えば水電池の電極材料や触媒に関連しています。
特に五酸化バナジウム(V2O5)は水電池や触媒用の電極材料として広く使用されています。
本論文では、V2O5(1 0 0)表面などに水分子が吸着した場合の挙動解析をMaterialsStudioを使用することで行っております。
計算モデルと手法
本論文では、吸着する物質には五酸化バナジウム(V2O5)を、吸着される物質には水を適用しています。 また、(0 0 1)、(0 1 0)、(1 0
0)の3方向における吸着シミュレーションを行い、反応経路を比較しています。 それぞれの反応経路は LST/QST法 を適用した遷移状態探索により導出することが出来ます。
モデルの構造最適化や遷移状態探索には、量子力学計算に幅広い計算対象を取ることが出来るCASTEPモジュールを使用しました。
求められた物性値の考察
上に(0 0 1)、(0 1 0)、(1 0 0)の3方向(右上、左下、左上)における反応解析結果を示しました。
これらを比較すると、(0 0 1)面における反応エネルギー障壁は一番高くかつ吸着後の安定性も一番増しているため、この面に吸着した水分子は熱力学的に解離しにくいとわかります。
次に残りの2つに注目すると、V2O5表面に水分子が吸着する際、V-O間距離が非常に近くなっていることを見てとることが出来ます。
このような距離の変化はV2O5触媒が水分子から酸素原子を取り上げうることを示唆しており、この現象は実験と一致していることが知られています。