第6回:「顧客への保守・点検サービスの提供」に対する CMMSの適用

 

 

1.  顧客の資産を管理するためにCMMSを適用

 

最近のCMMSの導入や検討の傾向として、顧客に対する保守・点検サービスを提供する企業による導入検討の事例が増えています。以下に例を示します。 

 

  • 製品販売(導入)後、保守契約に基づくサポート内容の管理
  • 製品販売(導入)後、機器の履歴管理と交換部品管理
  • 顧客資産の法令点検や定期検査に対する提案と工事の実施

 

CMMSは、資産に対する点検・保守内容の管理や交換部品の管理を行う機能を持っています。これに顧客管理の機能を搭載または連携することにより、顧客を切口にしたサービスの提供状況、顧客資産の管理が可能となります。

 

CMMSが持っている本来の機能および顧客管理機能を用いることにより、以下の実現が可能となります。

 

  • 「作業を標準化する機能」の活用による、提供サービスの均質化。
  • 顧客資産の仕様、関連ドキュメントを常に最新の情報とすることが可能。
  • 顧客に対する作業および作業履歴の一元管理。
  • 「予防保全周期」の活用により、顧客への保守・点検提案の漏れ防止。
  • 構成部品管理および在庫管理(との連携)による予備品ビジネスへの展開。
  • 顧客ごとの資産を管理することにより、顧客ごとのSLAの管理と実施記録。
  • 作業報告に顧客の意見や現場の意見を付与することで、生の意見の吸い上げ。
  • 故障、不具合時の責任区分、有償・無償管理、並びに、原因と対策の一元管理。 Service Failure(機会損失)に伴うペナルティの設定がある場合もあり、自衛のためにも重要な機能となります。
  • 顧客資産についてライフサイクルに渡る点検・保守計画および履歴の管理。
  • 顧客へのコンタクト履歴とフィールサービス員の作業を一元管理。
  • 履歴を分析することにより、製品の改良や改造計画への反映。
  • 履歴を分析することで、サービスの内容を分析し、SLAへ反映。
  • 履歴を分析することにより、顧客資産の状態把握と次回提案への展開。

 

顧客に対するサービスの状況がリアルタイムで一元管理されるため、営業部門にとっても有用な営業支援ツールとなります。顧客への訪問の前に、CMMSを参照することで、不具合の状況、顧客の意見、直近の作業予定が把握できる様になります。

また、営業員がコンタクト履歴を残すことで、フィールドサービス員は、営業の展開状況を知った上で、作業に望むことが可能となります。

 

以上を、継続的に実施することで、

 

SLAに基づく作業の細分化と標準化、及び、顧客ごとに提供するサービスの最適化 が可能になります。

 

顧客の立場からは、「私たちのための保守・点検サービスメニュー」となり、サービスを提供する側からは、SLAごとにサービスの標準化をすすめることが可能となります。結果として、顧客満足度を高めることが可能となります。

 

次に、顧客満足度の観点から、上記の状況を考えると、以下の通りとなります。

 

  • 顧客資産の状況把握、顧客の意見、現場の意見の集約が可能となり、クレームに至る前の「不平・不満」を収集することが可能となります。
  • 「発生する故障の上位30%がコストの80%を占める(80-30セオリー)」の様に、留意すべき故障や不具合を絞り込むことができます。CMMSを利用することで、実績に基づいた定量的な値から優先順位を決定することができるようになります。
  • 更に、上記の故障発生率に、対象顧客に於ける故障の影響度を掛けることにより、「顧客が考えている故障や不具合によるリスク」が計算でき、対象顧客に対する故障対策の優先順位が決定できます。
  • 以上で求まった、優先順位の高いものから対策を講じることで、顧客の信頼を得ていくことが可能となります。

 

 

 2.どこへ適用するか

 

CMMSを 「点検・保守サービス」 領域に適用する場合、どの部門に適用すべきかを考えます。企業の中で、顧客に対する点検・保守サービスに必要となる情報について、どの部門が作成、または、参照するかをまとめると下図の通りとなります。

 

 

 

1: 部門別のCMMS適用

 

 

顧客の資産(顧客に納入した製品や製造物)の情報は、営業および品質管理(品質保証)部門に情報が集まります。また、直接、顧客に対応するのは、営業およびフィールドサービス部門となります。このような状況から、保守・点検サービスにCMMSを適用する場合は、営業、品質管理およびフィールドサービス部門が主体となり情報を一元化し、営業およびフィールドサービスの業務フローに基づいて導入をすすめるのが、自然な流れとなります。

 

 

 

3.課題

 

顧客資産の保守・点検サービスをシステム化する上では、作業場所が、顧客の施設であることを留意する必要があります。CMMSを適用する場合、以下の課題について解決方法を検討しておく必要があります。

 

・モバイル対応

 サービスの記録を現地で実施する場合、モバイルの有効活用を考える必要があります。

 また、作業終了後、納品書やサービスの明細を作業報告として顧客に提出する場合、

 印刷をどう行うかを検討しておく必要があります。

 

・点検・保守サービス内容の記録

 点検・保守項目表への記録をモバイルで実施するのか、もしくは、手書きで行うのかを

 決めておく必要があります。手書きの場合、再度、端末にて情報を入力する必要があり、

 フィールドサービス員の負荷が増大します。

 

・情報の一元化

 品質管理部門またはCMMSに最新の情報が集まるよう、他の部門からの情報の流れ、

 管理方法を徹底する必要があります。情報の一部が不正確または古い場合、結局、全てを

 確認する必要があり、システム化の意味がなくなります。CMMSを導入する場合は、情報

 更新に関する業務フローも併せて設定し、最新情報を保証するしくみを用意する必要が

 あります。

 

 

 

4.まとめ

 

保守・点検サービスを提供する企業が顧客の資産を管理するためにCMMSを検討する事例が増えています。今回のメルマガでは、保守・点検サービスへのCMMSの適用により何ができるか、どこに適用するか、および、課題を示しました。

 

顧客の資産の状況を把握することで、顧客の囲い込み、満足度の向上に資することが可能となり、手段として顧客管理とCMMSの組み合わせが有効なツールとなります。

 

 

 

「第5回:保全業務を遂行するために必要な機能」

 

「第7回:保全管理業務のシステム化の順序と考慮すべき点」

 

 

 

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