設備保全に自然言語処理を適用した事例

 

 ■ 弊社で実施した自然言語処理に関する技術

自然言語処理は、「私達が普段使用している言語を、コンピューターで分析、処理させる技術」になります。機械翻訳や情報抽出、文書の分類等の様々な技術があり、多くのサービスや製品に使用されています。

 

弊社では、保全履歴を用いた分析を実施するために自然言語処理を活用してきました。特に、文書の分類技術や類似文書の検索技術、情報抽出の技術を使用したツールの作成やサービスを提供してきました。

 

以下では、

情報抽出技術を用いた蓄積した故障履歴の整理

不具合、故障情報同士の見える化

 

の事例について紹介いたします。

 


 ■ 事例紹介:蓄積した故障履歴の整理

 

ここでは、蓄積した故障、不具合履歴に情報抽出技術を使用して整理を行った事例について紹介します。

現在、過去数年分の故障、不具合履歴を持っており、この履歴を用いて設備や製品の故障予測、メンテナンスや部品の交換周期の目安の検討などの分析を実施したいと考えているとします。

 

分析を実施する場合、蓄積した故障履歴の中から、「特定の故障履歴」を取得する必要があります。上図に示すような蓄積した故障履歴には、以下のような理由で「特定の故障履歴」の取得の難しさがみられます。

 

  故障履歴には、事象が発生した「機器名」、「状況」、「原因」、「処置」、「対策」等の項目は「実施内容」に自然文でまとめて記載されている。

  実施内容に記載の内容には必ずしもほしい内容についての記載があるとは限らない。

(例えば、「処置」についての説明があるが「原因」や「状況」の記載が無い)

● 「モータ」と「モーター」、「入替」と「入れ替え」のような表記や表現の揺れが存在する。

●  設備名や製品名、部品名の表現や書き方が記載者によって変化している。

  誤字、脱字が存在する。

 

これらの内容がある場合、検索やフィルターを使用して、欲しいデータを探すには、あらかじめどのような記載の仕方があるかを知っている必要があります。通常は、未知であるため、欲しいデータを探すことは難しい場合が多くなります。例えば、統計処理や機械学習を用いた分析を実施したい場合、ある程度のデータ量が必要になります。この時、上記のような事象がある場合、うまくデータを探索できず、必要なデータ量を集められないことが発生する場合もあります。

 

分析を実施するには、このような故障履歴から「特定の故障履歴」を探しやすくするために、自然言語処理の抽出技術を適用して、分析が実施しやすい形にデータを整理ます。

 

データの整理の例として、先ほどの図の青い表が分析に使用したい故障履歴のデータとします。この青い表から分析に使用するデータ項目(列数)を増やし、整理します。

 

データ項目を増やして整理したものが緑の表になります。

青い表の「実施内容」に記載されている「作業部品」、「作業種類」、「症状」、「症状の種類」について、自然言語処理を適用した抽出作業を実施しました。

 

 

例えば、「ある設備のモーターの交換周期を知りたい」とした場合、蓄積した故障履歴の中から「モーターを交換した」データが必要になります。

 

先ほどの整理したデータから、項目「作業部品」が「モーター」、項目「作業の種類」が「交換」のデータについて絞り込むことで、欲しいデータを得ることができます。このデータを用いてワイブル分析を行うと、設置もしくは稼働してからどのくらいの時間で故障の発生確率がどのくらいかがわかるため、いつモーターを交換するかの目安にすることができます。また、分析を実施するためにデータを整理することで、従来の故障履歴では不足しているデータ項目等を見直すことができます。

 

この整理した故障履歴を使用することで、分析(故障予測やメンテナンス周期の検討、等)で使用するデータを探しやすくなります。

 

まとめ

今回の例では、「どの部品でどのような症状が起こり、どのような処置を行ったか」についてのつながりについて着目したため、これらの項目について抽出作業を実施しました。しかしながら、抽出すべきデータについては、故障履歴を使って何をしたいか、どのような分析をしたいかによって変わります。また、不必要にデータ項目を増やすと、報告書の作成時の負荷になる(現場の方の手間が増える)ので、しっかりと検討する必要があります。

 

 ■ 事例紹介:情報抽出と情報同士のつながりの見える化

ここでは、上記の事例紹介で整理した情報を使い、情報の見える化について紹介します。

抽出した故障情報の見える化

整理した情報について、「年度」、「作業部品」、「症状の種類」、「作業の種類」、「その他情報(費用等)」に着目して、情報同士のつながりを有向グラフで表したものを図に示します。

 

このようにすることで、現時点で把握している項目から、経路を辿ると、

・どのような症状が発生するか

・発生している症状に対して、どのような処置をしたか

・原因の項目があれば、その原因によって発生する症状は何か

・異なる設備や製品、部品で、共通している原因は何か

・ある原因の対策をした場合の効果はどうなるか

 

を確認することができます。

重要な原因の選定と、対策を講じた後の有向グラフ

 

有向グラフを使った具体的な例について説明します。

図の左側に示すように、蓄積した不具合報告の項目「設備」、「原因」、「事象」に着目して、有向グラフを作成します。

 

図の各節点は、 

赤い色 →「設備」

青い色 →「原因」

緑色  →「事象」

 

になります。

  

この例では、それぞれの設備で発生した事象の原因が8個あります。

8個ある原因の中で、重要な原因の上位3個に対して、対策を行い、その効果を確認したい場合を考えます。

この場合、まず、8個ある原因の中でどれが重要なのかを決める必要があります。有向グラフのようなグラフの場合で重要度を決める方法の1つにページランクというものがあります。ページランクは、設備や事象からたくさん線がつながっている原因は重要な原因であるという考え方で、重要度を求める方法になります。

 

得られた重要度の上位3個に対して、対策を実施した場合の有向グラフが図の右側になります。

重要度の上位3個に対して対策を実施した結果、発生する事象が9個から6個に低減していることがわかりました。

 

このように、情報同士のつながりを見える化すると、様々な分析を実施できます。

その他、蓄積した不具合報告書の分類に自然言語処理を適用した事例、不具合報告書の類似検索に自然言語処理を適用した事例もございます。

 

 

詳しく知りたい方は、下記お問い合わせフォームよりご連絡ください。


弊社では自然言語処理の技術提案やデータ解析、ツール開発の支援を行っております。
データの蓄積や活用に関しまして何かご要望などございましたら、お気軽にご連絡ください。

 


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